宇宙のかなたから自分を見つめなおす
かつて私を幹部に推薦していただいた方にMさんという方がいた。他の名物幹部と同様数々の名言や語録を残された人だ。この方は別のビジネスで成功を収められた後、私のいた工場へ来て私の担当する事業の立て直しに尽力をされた。工場の人間は頑固で自分の経験しか信用せず人の意見を聞かないという人が多かった。Mさんが我々の仕事の立て直しに来られた際も、多くの管理職やリーダーはMさんの提案に逆らっていた。かつてMさんが言うようなやり方をしてどんな失敗があったとか、もうすでに何度もそのやり方はやってうまくいかなかったとかいった内容をMさんに説明した。しかしMさんはそのやり方が道理に適っていると思ったら絶対に意見を曲げずにとにかく1回はやって結果がどうなるかを確認するよう皆を説得されていた。当時私は管理職前の係長ぐらいの立場でこのマネージメントを遠くから見ていた。不思議な事にかつてトライアルしてうまくいかなかったはずのやり方を改めてやってみるとうまく行くことが多かった。結果として「Mさんの言うことは案外当たる」とか「今回もMさんは当たりか?」という言葉が周りから聞こえてくるようになった。そしてそのうち私も昇進してMさんから直接薫陶を受ける立場になった。そして他のリーダーと同様最初は逆らってみるものの、最終的にはMさんの言い分に屈服することになった。そしてある時にMさんに聞いてみた。「何故Mさんの意見は当たるんですか?」と。Mさんはにやっとして、「君らは近くばかりを見ている。宇宙の彼方から自分のやり方を見つめれば良いか悪いかはすぐわかる」との事だった。

宇宙の彼方から見れば何でもお見通し