商売で行った国3:ハンガリー
欧州を離れて米国に滞在している時に、欧州の現地責任者より欧州の重要客先との会議に出ないかという依頼を受けた。私は英語もそれほど上手ではなく、正直な所十分役に立つだろうかという心配を感じたが、現地責任者は「オランダ滞在時のあなたの評価が素晴らしい。日本の会社がものづくりに対してどういう考え方をしているかを話してくれたら良い」とのことだった。それなら私にもできると快く引き受けた。元々日本の会社と買収した会社は同業の競合関係にあったが、ある再生エネルギー分野の素材については日本では扱っておらず、私にとっては初めて触れる仕事だった。ただ事業規模は大きくまた将来的に期待される分野であり、欧州で話を聞く意味があると考えた。再生エネルギー分野の素材を生産しているある大手メーカーの工場がハンガリーにあった。まず米国からロンドンへ東回りで渡り、次にドイツで客先との会議に出席した後、ドイツからハンガリーのブタペストまで行った。そこで現地責任者と出会い、車で工場まで行くことになった。その工場で客先のトップと会って工場見学並びにビジネスの展望について話し合う機会を得た。ハンガリーは旧共産圏で、街並みも古くあまり栄えていないように見えたが、安い人件費をベースに多くの西側企業が進出していた。この会社のオーナーはトルコで仕事を開始し、その後ハンガリーやドイツに工場を作り、さらには私が住んでいた米国の南部にも工場建設を計画中とのことだった。旧共産圏の国にパスポートなしに入り、トルコ人オーナーとフランス人やアメリカ人メンバーと一緒にビジネスの話をする。何と世界は狭いことか。

旧共産主義国ハンガリーの街並みは静かだった