〇川△香さんと音頭

　ある時町内会の夏祭りに行う盆踊りの音頭の歌手として〇川△香さんという方を招待した。そのきっかけは、たまたま私の集めたバンドのボーカルのお母さんが盆踊り音頭のプロ歌手であり、〇川△香さんという名前で県内では有名であった事からだった。私は名前を聞いたことがなかったが、そこはプロ歌手ということでありまた友人の母親なら何の心配もないだろうと思い町内会に打診した。また息子のバンドが演奏する場に出演するということから格安のギャラで出演を引き受けてもらったのも手伝って、町内会では二つ返事でOKとなった。さて当日その方が我々の町内会の祭りにやってきた。私は当日前座？のバンドのリーダーであり、朝から忙しく準備を行っていた。何とか夕方からのステージを無事終えて、最後に〇川△香さんのステージを見ることになった。何とお囃子の太鼓については我々のバンドでボーカルを務める息子が担当するようで、なかなか面白いシチュエーションが出来上がったと思っていた。さて盆踊りも佳境に入り、〇川△香さんの歌う音頭にも同じ歌詞が繰り返されるようになった。そして歌手も〇川△香さんをはじめとして全員が入り盛り上がりを見せてステージは終わりを迎えた。そして最後プロ歌手である〇川△香さんのかっこよさを見た。音頭を歌い終わってから1分近く〇川△香さんは聴衆の皆さんの前でお辞儀をしたまま動かなかった。そしてそれからゆっくりと顔を上げにこやかな顔でステージを下りていかれたのだった。私は色々なプロ歌手のステージを見たが、この時ぐらいプロ意識に徹したステージを見たことはなかった。