大晦日/元旦の思い出1
私は大学を出て会社に入ってから20年ぐらいは現場の中で試行錯誤をしながら製造方法の改善・開発を行ってきたので、現場の中で働くことは気にならないし、むしろ好きであった。しかしながら職位が上がっていき、課長や部長という肩書がつく頃にはあまり現場でオペレーターの人と一緒に仕事をするのは避けるようにしていた。これは自分より下の開発担当者に変なプレッシャーを与えてもいけないと思ったし、また現場の人と仲良くなりすぎるのは変な誤解を与える元にもなりかねないと思ったからだった。逆に言えば自分の仕事の領域に工場長や取締役の人が介入してきて色々指図をされたら嫌だろうと思うので、むやみに現場に入り過ぎるのは避けるべきだと思った。しかしながら1年も終わろうとする大晦日だけは誰が何と言おうと現場でオペレーターの人と一緒に働きたいと思った。一つは私のいた会社は24時間365日生産を続ける会社だったので、たまたま大晦日や元旦に仕事に当たった人は世間の人がテレビを見てゆったり過ごしたり酒を飲んでくつろいでいるにもかかわらず仕事に行かねばならない。こんな事からせめて製造現場のトップである私だけでも年に一度ぐらいは一緒に働いてくれる仲間たちに「明けましておめでとう。大晦日や元旦出勤ご苦労様。今年も宜しくな」というメッセージを表しておきたかった。また製造会社は安定した生産ができる事が一番大事だが、微力ながら私が入って若干なりとも生産量が上がる弾みになればという思いとさらには来年こそはもっと良い生産ができるようにという願掛けが合わさったような行動だった。

現場を思うと大晦日にゆっくりする気分になれなかった