ギターを弾けるだけでは女性にもてない
中学生の時に「女性にもてたい」という不埒な考えからギターを始めたが、中学・高校と男子校に通っていた私はこの目標達成に向けての実戦の場がなかった。そして暗い予備校時代を終わりようやく大学に入学してチャンスが訪れるようになった。当時は合ハイ(合同ハイキング:男女でどこかへ遊びに行く、の略称)とか合コン(合同コンパ:男女で酒を飲みに行く、の略称)が主な催しだった。そして初めての合ハイは京都御所の芝生だった。最初のうちは皆でしゃべって飲んだり食ったりしているが、そのうちに間がもたなくなり、せっかくギターもあるので歌でも歌おうかとなった。ここは私の出番だと勇んでギターを取り出したものの、どのように場を盛り上げたら良いかはわからなかった。とりあえず持ってきた歌詞集を配ってギターを弾いて皆で歌うよう誘導しようとするが、今一歩皆のノリが悪い。今ならすぐに感じることだが、要はまず少し先導をする歌のうまい人が歌って徐々に場を盛り上げて自然に皆がそれに入っていくのがスムーズな流れというものだが、その時の私はこうした流れを全く理解せず、ギターさえ弾けば皆が合わしてくれるものと勘違いしていた。思えばいかにも男子校のみで6年間過ごしてきた男の考えそうなことだった。そのうちに男子メンバーの一人で今風な曲を理解している人が吉田拓郎の落陽という歌を始めた。この曲はイントロの部分のアコースティックギターのカッティングに特徴がある曲で、このカッティングで一気に場は盛り上がって以後場の雰囲気は大変良くなった。思えば「ギターが弾けても盛り上げがなければ女性にもてない」ことを自覚した日だった。

ギター演奏は盛り上げが大事だと気づいたあの頃