手を抜かない仕事を学んだ
50代前半に大変教えられた上司がいた。今思っても少し極端過ぎて、すべて真似をしたいとは思わないが、仕事に対する真摯な受け止め方は学ぶ部分が多かった。この人の仕事の仕方は一口に言えば「手を抜かない」やり方だった。まず仕事を始めたら、この仕事は一体どういうふうに進んでいくかを自分なりに予測することが大事だと考えておられた。そしてその道筋に沿って自分なりのシナリオを作ってそれを進めていくことを重要視されていた。当時の私の仕事の仕方とはどちらかというと行き当たりばったりで、最初は自分の持っている浅い経験と知識から考えてスタートして問題にぶち当たってから悩むというやり方をしていたが、十分に練った作戦を立てて仕事をスタートするように仕込まれた。またそのための準備が重要だとも教わった。例えば何かの技術を進めていく場合でも必ず周辺技術というものが存在する。そうしたものをすぐに必要じゃないと切り離すのではなく、しっかり懐に知識として持っておくと、仕事を積み重ねていく際にやり方がより重厚なものになっていく事も学んだ。また人と交わり自分の考え方を理解してもらうようにする会議の重要性も教えられた。通常会議とは発表者は一般的な起承転結を話すだけだと考えていたが、発表を行う前の事前準備に相当な時間をかけることも教えられた。こうしたやり方はそれまで教えられたことがなく、慌てふためきながら従うしかなかったが、「仕事に対する新たな向き合い方」「仕事とは厳しくやっていく事」を学んだ一時期だった。ただ個人的にはそういうやり方だけが仕事のやり方とは今も思わないが。

仕事は「あらゆる角度から準備をせよ」と教えられた