女性中心バンドの反響1
会社に入って8年目に工場はひどい水害を経験した。この水害により工場で働く人は疲弊してしまった。当時若者のリーダーだった私は何とかこの暗い雰囲気を吹き飛ばせないかと考えて、社員の中から「歌って踊れる明るい女子」をスカウトして皆の気持ちが明るくなるようなバンドを結成した。そして当然ながらこのバンドは会社の催しで皆に見てもらうべく練習を始めた。初のステージデビューは夏の「納涼祭」だった。このバンドの反響は私が企んだ以上に大きいものがあった。元々会社自身は重厚長大な設備を有する古い体質の会社だった。したがって社員の90%以上は男性であり、ステージに若い女性が立つなどほとんど考えられない状況だった。したがって最初にステージに我々が立った時には、見ている人はどこかから一体何が起こったのかと思っていたようだ。そしてこのステージの目的は「皆を元気にする」ことだったので女性はある程度色っぽい語りをしゃべらせた。また衣装も当然ミニスカートと露出度の高い上着を着せた。歌詞についても当時100万枚売れた有名曲から選び、皆が親しみやすいものを歌った。こんな仕立てだったので、演奏が始まるや否や場はすごい盛り上がりになりあっという間にステージの前にかぶり付きで演奏を聴く観客まで現れる始末だった。また派手な衣装で着飾っていたこともあり、ほとんどの客は演奏者が自分たちの工場の社員とは気がつかず、「また芸能人を呼んできて。もうお金かかるなあ」という話まで出ていたようだ。演奏を聴いたらとてもプロとは言えないが作戦通り「皆を元気にする」ことだけは何とかできたようだった。

皆を元気づけるにはやっぱり疑似芸能人系バンドだ!