マレーシアの自然1
マレーシアの大地は大きく分けると、ジャングルとそのジャングルを切り開いてできた高速道路と都市になる。元々は赤土が多い土地にヤシなどの自然木が生えていて、人々が住む集落の道端には売り物でも何でもないバナナやマンゴスティンのような果物がうわっている。誰かが言っていたが、確かにこの国にいれば一年中無料の何かの食べ物が食えるので餓死の心配はないのかもしれない。こうした状況は東南アジアのどの国にも共通した雰囲気であるが、新興国の新興の度合いによって自然が失われるペースが異なる。マレーシアの場合、1990年代の初めから急激に工業化が進むようになった。例えば一時期マレーシアは日本を抜いてテレビ生産国として第一位になったこともある。こうした工業化が始まると、物流に必要な道路整備が必要となる。首都クアラルンプールと地方都市の間は小さな道路でつながっていたが、一気に片側4車線の道路をつなげて港や空港からの物資の移動をスムーズにする。幸いこの道路工事をはばむものはジャングルだけなので、ジャングルはどんどん切り開かれ、ジャングルの真ん中に突如として近代的な道路が出現する。この道路も建設当初は雨季の時には水没して通れなくなるというトラブルもあったが、何でもやり放題の工事で問題は解決していく。こうして突如ジャングルに新しいショッピング街、工場、コンドミニアム群が出現していく。私は昔からのクアラルンプールの高級住宅街に住んでいたが、時としてマンホールからオオトカゲが出たり、木の上から猿が現れた。それは当たり前で、ほんの数10年前までは彼らはジャングルの主だったから。

マレーシアの街はほんの数10年前はジャングルだった