昔のバンドマン
私が学生時代にジャズを習った方は若い頃プロのバンドに出入りしていたそうだが、当時の面白い話をたくさん聞いた。なかでも「業界呼び」というのはとても新鮮だった。要は芸能人を含めたバンドマンは何でも反対に言うのが通の呼び方だという話である。例えば銀座は「ザギン」と呼ぶ。女性は「ちゃんねえ」(おねえちゃん?)と呼ぶそうである。例えば「今度ちゃんねえとザギンへミーノしに行くんだ」と言われたら、「今度綺麗なお姉さんと銀座へ飲みに行くんだ」という意味になる。この「逆さ呼び」は時々テレビの芸能人が使っているが、実際にこういう話はあったのだろうと思う。また女性の美貌についても特別の言い方があるようだ。「おまえのちゃんねえなかなかいいじゃない?」と言われたら、「いやいやえみちゃんだよ」と返すのだそうだ。えみちゃんというのは、世の中の平凡なそれほど美しくない女性の総称としてバンドマン仲間での通称だそうだ。この頃のバンドマンは若い頃音楽で頂点に立つことを狙って都会で挑戦したが、結局夢破れて場末のバンドマンになってしまったという人が多かったそうだ。何とか小さなオーケストラで客や歌い手のバックバンドで演奏していたようだ。音楽の夢を捨てきれず、場末のステージにしがみついて細々と食っている人たちが多くいたとのことだ。こうした酸いも辛いもかみ分けて人生を歩いてきた人たちの話は色々含蓄があり面白い話が多かったとの事だった。しかしこうしたバンドマンもカラオケの台頭によりステージという職場から追い出され、ついにはどこかに消えていってしまったようだ。

昔は場末のバーに多くいたいわゆる「バンドマン」