演歌の女王都はるみ
若い頃私はあまり演歌が好きではなかったが、年をとるにつれ演歌の良さがわかるようになってきた。演歌は艶歌とも呼ばれ何とも言えない心の色が出てくる歌である。私が若い頃黒人が歌うブルースを好きになったのは、こうした心の色が前面に出てくる音楽だったからだ。そういう観点から演歌もある時期から好きになった。演歌歌手が絞り出す「こぶし」といううなるような歌い方は日本人の心を揺り動かす何かの力を持っているような気がする。色々な素晴らしい演歌歌手がいるが、中でも私は都はるみという歌手が大好きだった。都はるみさんは京都の西陣という所で生まれ、貧しい織屋の娘だったと聞く。たまたま私は京都の北西部に生まれ育ったが、西陣は私の家から自転車で15分も走れば行くことができた。私の子供頃はまだ西陣には機織り屋さんがあり、織物を作っていた。時代と共に織物業は廃れていき今はもう西陣で織機の音を聞くのは稀である。きっと都はるみの家も徐々に廃れていく織物業を細々と続けていたのかもしれない。彼女の歌い方、特にこぶしは絶品でブルースならばOh yeah!と、花火なら「たまや!」と叫んでしまうような魂がこもったものだった。また彼女の曲は何となく同じ歌詞を重ねて歌うようなイメージがある。「好きになった人」では出だしから「さようなら、さようなら」と入る。また「涙の連絡船」では「今夜も汽笛が汽笛が汽笛が」と汽笛を3度も繰り返している。こうしたダメを押すような歌い方で心情を盛り上げていくのだろうかと思ってしまう。もう歌わないと決めているのかテレビで姿を見ることも無くなったが、もう1回歌を聞きたいものだ。

演歌の女王都はるみ