チームをつくる5
現場で優秀な現場親方に何度も助けられた。昔の親方は普段はほとんど仕事をせずあたかも遊んでいるのかのようだった。例えば私がいた工場では鳩打ちが得意の班長がいて、夜勤の時は吹矢を作っては鳩を捕まえていた。おかげでその工場は鳩のふんがなく綺麗な現場だった。しかし何か緊急事態が発生し職長が手に負えなくなると彼らは最後班長に助けを求めた。経験豊かな班長はすぐに現場へ行き見事に問題解決をした。職長たちは班長の卓越した腕を知っているので普段彼が遊んでいても決して文句を言わなかった。実際そういう現場のリーダーを見てきたので、私も普段部下にルーチンの仕事を任せていたが、どうしても私がリーダーとして必要とされる時には自分が率先して問題解決に当たりたいと思っていた。ところが私には前述の班長のような卓越した技能があるわけではなく、どのようにしてリーダーとして部下の人の仕事とは違う形で組織に貢献できるのかと思っていた。ところが長らくリーダー業?の経験を積んでいくうちにどうしたら「自分しかできない仕事を行う」かがなんとなくわかるようになってきた。リーダーという仕事は「何かの課題に対して作戦を立てそれを遂行させる」立場である。したがって目に見えない中で、作戦がどう進むかの筋書きみたいなものは自分の頭の中におぼらげながら入っていた。したがって事態が異なる方向に動いた場合にはそれが作戦の範囲内か範囲外かもおよそ判断できるので先回りして修正する動きができる。そしてその行動こそがリーダーしかできない動きだ。気がついたら私も部下の前で多少ふんぞりかえっていた。

1年に数回は自分が動かないといけないこともあった