海外で死亡事故を体験
私が海外工場トップの時に死亡事故を経験した。マレーシア工場での協力会社社員による事故だった。月初めの朝礼が終わり解散しようとしている時、現地の事務部長が「XX社の社員が〇〇棟のエレベーターから落下したようだ。ぴくりとも動かない」と伝えてきた。慌てて現場へ行ったが、すでにその社員は頭から血を流して亡くなっていた。4階のエレベーターのドアから乗りこんだ社員がそのまま12m下まで落ちたとのことだった。本来ドアが開いた際に待機するはずのゴンドラがなかったという。大変な事になったと思った。災害の原因を明確にして十分な対策を打たなければ生産の再開は不可能だと思った。しかし警察の対応はあまりにもあっさりしたものだった。現場の生産停止は1日だけで、簡単なエレベータードアの安全対策を追加しただけで、生産再開が許可された。また日本へも死亡事故についての緊急報告を送ったが、本社人事部から大きなリアクションはなかった。一連の現地の動きはいかにも東南アジア的であったし、本社の対応も海外子会社の事故であり本社は大きく関与せずという雰囲気だった。また亡くなった社員については協力会社から見舞金?が払われたが、わずか100万円ほどだった。また事故当時一緒に働いていた協力会社の同僚の社員の消息がわからなくなり、さらに事件の状況が掴みづらくなっていた。これが日本の正社員の死亡事故なら絶対に曖昧な調査の仕方で許されないはずだった。私は現地のトップとしてこんな中途半端な終わらせ方をしてはいけないと必死で調査を続けたが結局それ以上進まなかった。

マレーシアで生涯一度だけ死亡事故を経験した