大人になって好きになった音楽ジャンル
学生時代に音楽を始めた頃は音楽種に結構偏見があり好き嫌いがはっきりしていた。例えば元々フォークソングが好きでここから音楽をスタートしたのに、ブルースやジャズのようなある面「重い」音楽を演奏するようになると、美しいハーモニーで歌うフォークソングは「ビューティフルフォーク」と言って少し軽蔑するようになった。そんな綺麗なハーモニーはガキが演奏するものや、みたいな感覚が芽生えていた。またクラシック音楽は言うまでもなく、近代音楽が生まれる基礎になった音楽であるはずなのに、少し即興演奏ができるようになると、「楽譜に書かれているままに演奏するなんてアホらしい」などとうそぶくこともあった。(本当は感情を入れて楽譜通りに演奏することもできなかったのに)さらにもっと生理的に受け付なかったのは演歌だった。2ビートのリズムや恨めしいような感情でこぶしを回す演歌サウンドはとても私のようなミュージシャンが演奏する音楽ではないと思ってしまったわけだ。そして演歌がさらに進んで浪曲のような音楽にいたっては、とてもついていけないとまで思ったものだった。ところが少しずつ大人になって幅広く音楽を聴くようになると、それまでの狭い了見は少しずつ消えていった。演歌や浪曲の暗さや重さはブルースの持つ暗さや重さとある面似ていたし、演歌のこぶしのように魂を込めてアメリカの最高レベルのブルースシンガーが歌いあげているのだということもわかった。そしてクラシックの音階はすべての即興演奏のベースに位置するものであり、論理だって演奏するなら避けて通ることはできないことも知った。

大人になり色々な音楽がこだわりなく好きになった