ジャズを扱った映画「バード」「ラウンドミッドナイト」

 ジャズを題材とした映画は多々ある。中でも超暗いイメージの映画は本当のサックス奏者デクスター・ゴードンが主演男優として演じている「ラウンドミッドナイト」とビーバップのサックスの神様チャーリー・パーカーの自伝「バード」の2本だ。ともにジャズ演奏家としてさらに自分をレベルアップしようとするあまり、自分の中で自問自答を繰り返しながら身も心も苦しめ遂には薬物に手を染めみじめな最後を迎えるという点で共通のエンディングとなっている。ラウンドミッドナイトの舞台は米国ではなく欧州のパリである。実在の話はバド・パウエルという天才ピアニストがパリでフランス女性と恋に落ち、薬物におぼれながら喜怒哀楽を繰り返し最後は自分の命を絶つというものだが、映画ではあえてピアニストではなく、サックス奏者が演じている。私はこの映画を見る以前、若い頃から晩年までのバド・パウエルの演奏を聞いていたが、腕は若い頃の方が圧倒的に上だが、何故か晩年の演奏の方が情緒的だと思っていた。実際動かない指で弾く演奏が素敵だった。きっと彼の中で葛藤を繰り返しながら真の素晴らしい演奏の境地を見つけたのだろうと思ってしまった。バードではパーカーの頭の中で次々と素晴らしいソロが浮かんでそれをものにしていく頃から、徐々にアイデアが浮かばなくなる中で薬物に救いを求める気持ちが出てくる過程がうまく表現されている。我々普通のレベルの人間はレベルダウンしても、「まあいいっか」とあきらめるという発想に行き着くのだが、こうしたいわば天才ミュージシャン達はそういう自分を許せないのだろう。ああ凡人で良かった。

ジャズミュージシャンの苦悩を描いたBird

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