ステージでの曲選びの楽しみ
私は一緒に演奏したほとんどのバンドでバンマス(バンドマスター)をやらせてもらってきた。バンマスというのはバンドマンであればバンドに入るお金をまず自分が受け取ってそして好きな分だけピン跳ねしてから仲間に残りを渡すという強い権限を持っているが、私たちは別にプロでもなかったのでそういうお金のやり取りはなかったが、唯一強い権限を持っているものがあった。それは「ステージでどんな曲を演奏するかについての最初の提案を出せる」ことであった。勿論メンバーとの合議で多少曲や曲順が変わることもあるが、基本最初に提案される曲が優先されるのは言うまでもない。曲を選べる楽しみは数々あるが、まず自分が好きな曲を選べることだろう。当たり前だが皆音楽を始める時は「〇〇の曲をやりたい」と思って音楽を始めるものだ。その曲への思い入れは色々ある。あのサビ(盛り上がりの事)の部分での転調がかっこいいとか、途中でリズムが変わる部分をうまくこなすのにもう一歩努力しなければとか、美しい詩が素晴らしいとか思いは様々だ。それを演奏することは、単にその曲が好きだというよりもその曲と何か一体感を持てるという意味で一歩進んだ気持ちになれる。また曲が決まると次はそれに合わせた順番やパフォーマンスを考えたくなる。次の曲の前ふりとしてギャグを入れて観客を笑わせてみたいとか、自分が作った曲ならその曲を作るに至った経緯を皆に話したいとか思いは次々と巡る。また曲順は基本的には起承転結がわかるようにしてきた。特に始まりの曲そしてそのイントロにはこだわったし、同様にエンディングはいかに良い余韻を与えるかに気を遣った。

バンドの曲選びは一番の楽しみだった