リーマンショック1
過去の経済の歴史を見ていくと、何度も暴落や恐慌のような不安定な状況が発生するのがわかる。私が現役のサラリーマンとして経験した最も大きな経済的な事件と言えば、リーマンショックではないかと思う。一般にリーマンショックと呼ばれるこの事件は米国の住宅市場の悪化によるサブプライムローン危機をきっかけに投資会社リーマン・ブラザーズが経営破綻し、そこから連鎖的に世界金融危機が発生した事件だった。実際私の担当する現場で起こったことを整理すると、この事件を機に全く物が売れなくなった。企業というものは物を売る→お金を得る→そのお金で材料を買い工場を回す→物を売るのサイクルになっているが、「世界中がお金が不足する」ことですべての企業活動が大きく縮小してしまった。客先からはお金が入らなくなる~入ってくるお金が少ないのに同じ規模で生産はできず生産規模はどんどん縮小していく、という悪循環が起こるようになった。リーマンショック前は中国を中心とした新興国の工業化が進み、全体としてむしろ「物不足」の状況だったものが、手のひらを反すように「物余り」になった。あらためて世界の経済が繋がっていることを再認識した時だった。港の倉庫には在庫が積み上がり、何とか入ってくるお金でやりくりするために何度も何度も減産指示が出された。工場にとって設備を止めていくのは苦渋の決断だったが、お金が入らない以上やむを得ぬ判断だった。ついに最悪期にはリーマンショック前の30%まで稼働率は下がった。工場では下請けの作業員が解雇され、下請けの仕事は正社員が肩代わりをしてしのぐという事態まで出てきた。

次から次への減産で遂に下請け社員を解雇する事態が起こった