アンチトラスト疑惑1

 私が現役時代に扱っていた製品は世界中のメーカーがマーケットシェア―を競い合う製品だった。それだけに商品を安く売って商売を有利に運ぶような行為は世界的な商道徳として強く禁じられていた。またグローバルメーカー同士が内緒で談合するなどはもっての他であった。そしてこういう禁止行為はアンチトラストと呼ばれていた。元々私の扱っていた製品は1990年代までは欧米が市場を席巻していたが、2000年代に入り中国が台頭してきて、また私たちのマレーシア製品もマーケットシェアを上げてきた。このため「アジア製品」については欧米からはこのアンチダンピングの嫌疑が噂されていた。実は私の勤めていた会社は1980~1990年代にある電子部品でアンチダンピング訴訟に敗れて多額のお金を支払うという苦い経験をしていた。そのためグローバルに展開する製品については必ず相手の価格動向を見て商売するようにしてきた。と言っても実際に同業他社の価格を知ることはできないので、客先の購買担当者との阿吽の呼吸を通じて何となく競争相手の価格を把握していた。実際のところマレーシアは当時安い原燃料代と人件費を武器に欧米の会社に比べても相当な競争力を持っていたが、敢えて安く売らずに品質や開発力をアピールしながら競争相手と変わらぬ価格で販売を行っていた。そしてこの問題は欧米の会社を買収するに至り顕在化し、ついには欧州コミッティーより事情聴取を受けることになった。しかし既述のように価格面で十分な証拠を持っていたのと、買収した欧州工場の優秀な交渉者がうまくこの問題をかわしてくれ無事解決ができた。

マレーシアの製品に対してアンチトラストの嫌疑をかかけられた

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