アンチトラスト疑惑2

 私の担当するグローバル製品は2000年代前半からの新興国の急激な工業化に伴い販売増を達成した。しかし我々と同様大きく販売を伸ばしていたのは中国だった。中国は今でもそうだが、商道徳という言葉がないかのような国だった。特に工業化が始まった頃は異常に人件費は低く、商品価格も先進国に比べざっと20~30%低いレベルだった。ただそれでもその頃はまだ品質も安定せず、総合力では欧米や日本の製品に劣っていた。しかしその後中国は先進国からどんどん技術を吸収し生産技術が向上するに至って、欧米品と遜色ない製品を安い価格で欧米市場に供給するようになった。そして2010年代に入り、ついに中国製品は欧州委員会からかけられたアンチダンピング訴訟に敗訴し、40~50%もの高い関税をかけられ一気に競争力を落とすことになった。ところが中国という国はただでは起きない国だった。ある時欧州委員会より「我々のマレーシア製品にアンチダンピングの疑いがある」という寝耳に水の通達が来た。早速詳細に調査を行うとどうやら「我々のマレーシア会社の名前を使った中国の会社」が欧州に向けて、「マレーシアを迂回して欧州に安く製品を販売している」ことがわかった。その後10人ほどの欧州委員会の役人が我々のマレーシア工場にやってきた。彼らは権威をかさに着て偉そうにしているように見えた。段々いらいらしてきた私は責任者として思わず言ってしまった。「我々はこの調査で膨大な時間を使っています。もし問題がないなら、勿論我々の無実を文書で回答してもらえるんでしょうね?」と。企業あっての役人だろうという私の言葉で役人たちは少しおとなしくなった。

マレーシアのダミー会社を通じて安い中国製品が出回った

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