日本製鉄USスチール買収について思う事
日本製鉄が米国のUSスチールを買収するという。これに関して種々の問題が出ている。このUSスチールは鉄鋼王カーネギーが世界で初めて大規模製鉄会社として創業した会社でありそのネームバリューは素晴らしいものがある。一方業績はほとんどの重厚長大産業と同様アジアや日本や中国の会社の後塵を拝し、現在はとてもトップ企業とは呼べない会社になってしまった。普通に考えるとどうしてこんなランクの低い会社を日本製鉄が買収しようとしたのかという気がする。しかし種々の理由があるのだろう。実は私も米国ベースの会社の買収に携わり、買収後の会社で日本との橋渡しをするような仕事を受け持った。私の担当する仕事もそういう意味で言えば重厚長大の仕事で、買収先はかつて世界のBig3だったが、買収時は大きくランクを下げていた。その時点の買収の理由はいくつかあった。重厚長大の設備を一から作るには膨大な費用がかかるが、買収によってすでに完成された設備を買う方がお得感がある。米国には他国にはない安い原燃料ソースがある。日本では原燃料の全コストに占める割合は40%以上だった。米国はまだ成長している国で、商売の市場としても魅力あるものであった。当時はアジアから高い船賃をかけて米国へ輸出していた。こういう事を続けるとアンチダンピング課税を強いられる可能性もあった。さらに長期的に見て中国とは激しい競争が予想されるが、世界各地に拠点を持ってグローバル企業として立ち位置を明確にする等々だった。しかも日本製鉄は米国に本社を移すとまで言っている。さて米国経営に染まったUSスチールを日本製鉄はうまく懐柔できるだろうか?(2025年1月米国政府はこのM&Aを却下したが・・・)

日本製鉄のUSスティール買収。経験と照らし合わせ大変だなあと思う。