工場長時代不祥事を起こさなくて良かった
多くの工場で不祥事というものの会見をテレビで見た。ある時は原発でトラブルが起こりあわや放射能が噴出する寸前であった。何重にも防御や対策を打っていてもトラブルはそんな人間の英知など簡単に超えて発生する。そして結局「予想を超えた問題」とか「100年に一度の稀なケース」とか言った言葉で新たな問題が現れてくる。その頃に敦賀にある原発をドライブで見たが、こんなに大きな発電所のトップは一体どんな気持ちで毎日の発電所の安全について考えているのだろうかなどと思った。またある時は大火災が発生し工場が1週間にもわたって鎮火しない状況だったのも驚いた。普通どんなに酷い火災でも空気を遮断する、水をかけるなどすれば数時間後には消火する経験しかしたことがなかったのに、ある最悪の条件が重なると火は全く消えないことが起こることを目の当たりにした。工場長の説明も「非常に稀有な条件が積み重なって発生した大火災」との説明だった。もっと悲しいのは人身事故で、特に死亡事故が発生した場合はかける言葉もない。被害者には家族がいて悲嘆にくれるし、マスコミはともかく工場の不手際を徹底的に責める。また我々の会社でも工場の特殊域で使用する「有毒物質」を紛失したことがあった。警察や保健所などにも通報を行い一般人が触らないよう注意喚起した事もあった。こうした様々な不祥事が発生している中で2006年から大規模事業所の事業場長を拝命することになった。家族からは「不祥事の会見で頭を下げてもまだ髪の毛があるからいいね」とか褒めているのかけなしているのかわからないような励ましがあったのを覚えている。

幸いに工場長時代に大きな不祥事は経験しなかった