好きなJazzスタンダード2「A列車で行こう」
名前は知らなくてもこの曲を知っている人は数多くいると思う。ジャズのアレンジャー兼プレーヤーとしては一世を風靡したジャズビッグバンドの王者デューク・エリントンの代表曲である。イントロはピアノ単独による非常にかっこいいフレーズから始まる。ちょうど駅員さんがホイッスルを吹くイメージが浮かぶようなフレーズだ。そして夢を乗せて列車が走り出すという曲調で曲が始まる。A列車というのはニューヨークの東ブルックリン地区からハーレム経由でマンハッタンを通っている列車である。ブルックリンというのはどちらかと言うと貧乏な地区で、当時からジャズがさかんだったハーレムや富裕層が集まるマンハッタンというのはブルックリン地区の庶民から見れば憧れの地だったと思われる。そんな庶民の夢を乗せて走る列車をイメージしてこの曲は作られたようである。したがって曲調もジャズが持つ暗いブルースの感情を抑えて、明るいコード進行で構成されている。特に曲の始まりの4小節がハ長調で言えば、ドミソードミソーラレファ#ーラレファ#のような1度転調のようなイメージのコード進行で成り立っている。こうした曲は私はフォークソングぐらいでしか聞いたことがなく初めて演奏した時には驚いたことを覚えている。またデューク・エリントンのアレンジでは、ビッグバンドをやる人なら必ずやってみたいこの曲ならではのリフがある。ホーンセクションがこの同じメロディーを合せて、その後にドラムスが4バースのようなソロドラムを叩くというこのアレンジはこれまでに一体いくつのビッグバンドが演奏したことだろう。

多くのビッグバンドが演奏した「A列車で行こう」