Tさんの日本流仕事の仕方2

 Tさんは米国工場で自分が休みの日であっても現場を回りながら働く人々と話をしていた。そうした姿はある面「現場と経営層が離れている」欧米の会社にあって、あらためて日本式経営の良い部分を持ち込むことになったのではないかと思った。一方彼自身の専門はいわゆる「機械屋」であり、ものづくりに必要な製造設備は勿論のこと、汚染物質が外部へ出ないように配慮した環境設備から従業員の福利厚生を守る厚生施設に至るまでありとあらゆる設備に熟知していた。したがって彼はこうした設備の議論には深く入り込んで議論をしたそうである。米国も日本も機械屋は一般的に保守的で冒険を好まない傾向にあるが、Tさんは日本で培ってきた別の見方をしたアイデアを果敢に米国人にぶつけたそうだ。初めはたどたどしい英語で話しかけるTさんの事を米国人はなめてかかっていたそうだが、段々と理詰めで方向性を指し示すTさんのことを理解するようになってきたそうだ。(実際米国で働く別の駐在員から聞いた話だが、米国人はTさんのことを大変尊敬しているということだった)また議論だけで足りなくなると、即座に「現場で議論しよう」という行動の速さもTさんの特徴であった。そして機械屋との議論の中でどうして米国人が納得しないとなると最後Tさんは自分で図面を書いてきて自説の正しさをとことんまで説明したそうである。こうした姿というのは日本人である私から見れば特段変わった行動でもないが、米国人から見れば何と細かい所まで口をはさむボスなのかと思ったようだ。(実際彼のポジションは技術関係取締役だった)

「現場で考えろ」で米国人を鼓舞したTさん

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