アメリカでヒッチハイクを乗せる
米国では生産工場が3箇所に分かれていたが、少なくとも1週間に1回は全工場を見て回ることを自分に課していた。現場の人は常に自分たちの仕事がトップからどう見られているかを気にしている。したがって現場がある場所にはできる限り足繁く通うようにしようという自分なりの信念を持っていた。ある時一番南にある工場に午前中に訪問して、午後から自分のオフィスのある本社工場へ帰るつもりで車を走らせていた。ちょうどその中間地点あたりの森の中を走っていると、急に男の人が手を挙げてきた。おそらくヒッチハイクのつもりだなと思い車を止めて彼を助手席に乗せた。しばらく走りながらどうでも良い話をして目的地まで走ったが、しばらくすると彼の話は少し要領が得ない。何をしたいのか正確な場所はどこなのかなど聞くが上手く答えてくれない。どうもあまり優しくするとどこまでもお付き合いしないといけないような気がしたので、「あのね、私は午後から仕事でXXまで行かないといけないんだ。はっきり行きたい場所がわからないなら、このあたりで降りてくれないか?ここならタクシーも拾えるし」と少しきつい口調でどなった。そうする彼も「じゃあここで降ろしてくれ」と言ったので降ろしてそのまま工場まで帰った。工場へ帰ってからこの話を仲間に話した。すると「よくそんな見も知らない人を乗せましたね。場合によってはホールドアップされて車やお金を取られるか、場合によっては命まで取られるかもしれませんよ」と言われた。言われてみればその通りかもしれない。今の米国は昔のヒッピーの時代ではない。無事だった事に感謝した。

米国で軽い気持ちでヒッチハイカーを乗せた