所得が計画的に上がった時代
昭和40年代に池田隼人内閣の下で「所得倍増計画」という政策が行われた。その頃の日本は戦争に負けた貧しい国であり、何とか産業で国を強くするために国民全員ががんばっていた。そしてがんばったご褒美の証としてこの「所得倍増計画」というものが実践された。当時大卒社員の給料は月1万円そこそこだったが、この計画の後年々倍々ゲームで増えていった。私が大学生の頃には月10万円が大卒新入社員の給料のイメージだった。私が会社に入社した時にはたしか12~13万円であったのを思い出す。しかしそれから以後バブルの崩壊が起こり、さらにはリーマンショックなどの経済リセッションが起こり日本人の給料は遅々として上がらなかった。多分私が会社を離れる2020年頃で大卒新入社員の給料は15~16万円だったと記憶している。こうやって見てみると1965年から1985年までの20年間は大卒社員の初任給は12~13倍に上がったが、1985年~2020年までの35年間はわずか20%しか上がらなかったことになる。年率で見ると1965年から1985年までは60~65%で給料は上がっていたものが、その後の30年は0.6%しか年率で上がらなかったことになる。しかし現実には0.6%という数字は大卒社員をできるだけ魅力的な給料で採用したいという企業の思惑が入った数字であった。日本はその頃は年功序列が一般的な給与制度だったので、新入社員を含め会社の中にいる人の給与は上げていかないといけない、しかし一方企業業績はパットせず全員にまんべんなく給与を増やす方法がなかった。結果必要悪で非正規社員という枠を設け何とか平均給与が上がらない調整が行われた。

賃金がほとんど上がらない30年を日本は経験した