南博「白鍵と黒鍵の間に」
南博というジャズピアニストが書いた「白鍵と黒鍵の間に」という本を読んだ。この人はほぼ私と同世代のようだが、昔のバンドマンの描写が懐かしい。私は学生時代にジャズを習いその後色々演奏するようになったが、教えてくれたバンマスは若い頃アルバイトでキャバレーのバンドマンをやっていた。それでその頃の話を色々聞かせてくれたが、まさに南博の本には同様な世界が広がっていた。バンマスがお金の管理をしていて時々金を持ち逃げする奴がいる話とか、バンドマンは本当はジャズを演奏したいけど客が好めば演歌でもラテンでも何でも演奏しないといけないといった話は当時のバンマスから聞いた話と全く同じだった。また南博の本にはPIT INNという新宿のジャズクラブの話が出てくる。実は私も学生時代に夜行列車を乗り継いでの北海道旅行からの帰りここを訪れた。まだ今のように新宿が開発されておらず、あちらこちらで工事をしていた。何故か夜の音楽であるジャズの生演奏が朝から聴けた。うまいバンドは有料で夜、新参者や下手くそは朝から演奏し無料だった。プロの登竜門で最初は皆朝の演奏から始めたようだ。南博の本にも「やっとPIT INNで演奏できるようになった」と書かれている。南博はその後運が良くてうまくメジャーの世界へ移ることができたようだが、当時のミュージシャンの大多数は食えなくなって最後は廃業していったそうだ。私も実は「生オケ」から「カラオケ」に変わる前に京都の木屋町で数ヶ月バンドマンのアルバイトをしたことがあった。初日バンマスから「くちなしの花」のイントロを初見で弾けと言われ泣きそうになったのを思い出す。

南博の「白鍵と黒鍵の間に」の中に昔のバンドマンの描写が出てくる