中国製品の脅威1
2000年代まで中国は「眠れる獅子」と呼ばれ、巨大な人口による潜在能力を抱えた国だと考えられていた。ただ共産主義であるが故に、産業育成に遅れ経済規模は小さいものであったのが、政府の政策方針変更にしたがい一気に産業育成に舵を切ったのが1990年代の終わりからだった。それでも「世界の工場」と呼ばれるようになる最初の頃は、先進国は中国がそれほど速い速度で成長するとは考えていなかったが、実態の成長速度は驚くべきものであっという間に先進国を追い抜くような経済規模になってしまった。私の担当する製品の中にも中国製品とバッティングするものが出てきた。私の担当する製品の中には汎用品と呼ばれる比較的簡単に生産できる製品と、開発品と呼ばれる難易度の高い製品があったが、汎用品の方は日本品の約30%近く安い価格で販売を開始されたため、汎用品市場の大半があっという間に中国品に席巻されてしまうことになった。この理由の一つは圧倒的に安い人件費にあった。日本に比べて1/30とかいった人件費には太刀打ちができなかった。ただ最初のうちはそれでも「安かろう悪かろう」ということで品質はまだまだ先進国品に比べ劣っていたが、そのうち品質もすぐにかなりのレベルまで上がってくるようになった。これにも理由があった。「世界の工場」として中国は先進国から工場誘致を行ったが、安い労働力と豊富な土地を活用できる代りに製品の技術ノウハウを中国に開示するよう求められた。長年かけて先進国で蓄積された生産ノウハウは「公の技術」として中国の技術機関に集められ、中国のどの企業も使用可能となってしまった。

2000年までは「眠れる獅子」だった中国だが・・・