10年ぶりに演奏するとがっくり

 私が最後にステージというものに上がったのはマレーシアを離れる2016年だった。それからすでに10年近く楽器を触ることはなかった(勿論時々遊び半分で鳴らすことはあったが)今や楽器のフレットやペグやマイクカバーなど金属部は錆付き、大事にしていたのに申し訳ないなと楽器に頭を下げる始末だ。しかし定年を境にして今後の人生を考えた時、自分の中で音楽は何かの形で続けていきたいと思う趣味だったので、少しまた触ってみようかと思い始めた。そしていざギターを弾いてみた。まず感じたのはこんなにこのギターは私に反抗するのだろうか?という点だった。私がこのギターを初めて手にした40年以上前にはこのギターはまるで恋人のように私に弾かれるのを待っていてくれた。そして打てば響くという感じで次々と甘い丸い音で私を魅了するサインを送ってくれた。ところがそういう思い出を胸に久しぶりに弾いたギターはもう何十年も会わずにいた昔喧嘩別れした彼女のように愛想もへったくれもなく何のやさしさのメッセージも与えてくれないものだった。この理由はまず明らかに私自身の腕の衰えが原因だ。正確にコードを押さえられず、音が伸びない。指が思う位置を抑えられない。ピックが弦に対して正確に当てられない。それはしばらく弾かないと当たり前かもしれないが、それ以上に情けないのは一旦ギターを持てば次から次へと溢れ出てくるアイデアというものが全く出てこない事だった。それは指が錆び付いている以外の何か音楽に向き合う基本的な部分が欠落してしまっているような気がした。しかし現状をしっかりと見つめて逃げないようにしよう。

しばらく音楽をやらないとアイデアのかけらも出てこない

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