ソロパートは緊張する

 バンド時代はベースやギターを担当した。いくつかの楽器を弾くことができることで異なる欲求を満足させることができる。本来弦楽器はリズム楽器であり、ドラムスと一緒に曲のスピード感やドライブ感を維持変化させるという特徴を持っている。一定のリズムを正確に維持するのは結構難しく、ドラムスの暴走を少しずつ抑えるのはベースやリズムギターの使命でもあった。一方恣意的に盛り上げるために少しずつリズムを変える事もある。聴く側の人は何かが変わっていくそして変わった後の新たな変化に驚き楽しむ事ができる。こうした地味ではあるが、全体を少しずつ変化させる喜びというものを何度も経験した。こうしたリズム陣に比べ、ソロパートをつかさどる楽器はよりダイレクトな喜びがある。まず聴く側が完全にソロに集中する。「全員が俺のソロを聞いている」と勘違いしてしまう。まさに音楽が持つ自意識過剰なのだが、ほとんどのソロをとる人はそう思ってしまう。したがって人前でどういうパフォーマンスをするのかを考え、できれば大きな拍手を得たいものだと思ってしまう。私はリードギターというポジションでそういう経験をした。大して上手くもないのに自意識は過剰になり、「今皆が俺の速弾きを聞いている」とか「あのプロと同じソロの完全コピーを弾かなければ・・」とかいう思いを感じる。そしてプレッシャーで間違うと思わず顔が引きつるわけである。そしてその情けない顔を悟られないようにサングラスをするという防御もする。ギターでこれだから、単音しかでない楽器はなおさらだ。例えばサックスを吹くSさんや人前で歌うTさんはいかなる心持ちだったろうか?

リードギターのソロ演奏は緊張する

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