世界の自動車の1/3に使用される素材を生産する

 会社員にとって自分の仕事のモチベーションを上げるものがないとなかなか継続的に自負を持って働き続けることは難しい。この自負とは例えば「全世界の人の食生活になくてはならないもの」とか「人類の健康増進を飛躍的に上げた薬」とかいった非常に大きな自負から「200年という長い歴史を持った名家」とか「常に近隣社会と共に歩んでいく姿勢を持った会社」とかいった観念的な自負のようなものまで様々ある。そういう意味では私の担当していたビジネスは重厚長大な工程から作り出されるグローバル生産物であり、しかも自動車関係に使われる用途が多いという特徴を持っていた。具体的には自動車の内燃機関周辺に使用される補強用素材として当時世界の約1/3のグローバルシェアを占めていた。こうした事実は働く者にとって随分大きな自負となっていた。ちょっとした職場の会議があれば生産の好不調が世界の自動車業界にどういう影響を与えるかを社員に説明して、改めて生産活動にミスがないよう訓辞を与えたりしたものだった。またマレーシア工場において工場で使う冷却水の供給が自然災害により減少して、あわや工場生産が停止するかという危機に直面したことがあったが、この際は政府のトップまで直談判に行き、「万一工場が停止したら全世界の自動車メーカーに大変なご迷惑をおかけしてしまう。まさにマレーシアのローカル問題が全世界に影響する。したがって優先的に水の供給を我々にしてほしい」と半分脅しのようなクレームをつけに行ったこともある。こういう時の気分はまさに背中に日の丸を背負い愛社精神で一杯であったような気がする。

世界シェア33%という自負に支えられていた私の会社人生

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