量が先か歩留まりが先か?
重厚長大の仕事に長く関わってきた。この仕事は世界中のどこでも必要になる産業の基幹部材を「安く早く潤沢に」供給するという使命を持っていた。この一見当たり前で簡単そうな使命を達成することが難しい。現場でよく議論される話があった。それは量を追うのか、歩留まりを追うのかという議論だった。少し景気が良くなってくるとお客さんはどんどん注文を出すようになる。この時にぴったりと必要な量を生産できると良いが、不足する場合が起こる。そこで議論になるのはどうやって生産量を増やすかということだ。ある人は「もっと不良を減らして良品を増やせば良い」という。しかし通常重厚長大な製品の歩留まりは80%以上が当たり前である。そうでないと原料コスト比率が上がり儲からない。したがって血のにじむ努力で歩留まり改善に取り組むが結果は数%上がるのが精一杯だ。お客さんは瞬間的には数10%多く必要なのに数%では全く不足だと言う。ある人は「いや単位設備あたりから流す量を上げる方が簡単だ」と言う。確かに蛇口を多くひねることで「流す量」は増える。しかしその後流す量が増えるとそれまで安定していた工程が不安定になり、流す量は数10%増えたのに歩留まりは下がり取れる量はあまり増えない。さらには不良品が増えることで、工程が乱れ余計な手間がどんどん増えコストがかかる。しかしお客さんの要求する製品はかろうじて納めることができる。この「ペースは遅いが少しずつ歩留まりを上げていく」考えと、「多少不安定でコストも上がるがお客さんが今要求する量を満たす」という考えのどちらを進めるかで40年間悩み続けてきた。

お客さんの増量要求に悶絶することが何度もあった


