素材産業という仕事

 私のサラリーマン時代は「素材産業」という分野で企業人として戦う40年だった。当たり前のことだが、40年という年月は長い。楽しい時も苦しい時もあった。しかし何とか仕事をやってこれた理由は家族を養うことも勿論だが、やっている仕事そのものに自負を感じられるものがあったからだろう。素材産業に従事する者としての自負はなんだろうか?NHKのドラマに「プロジェクトX」という番組があるが、あれは「自負」の塊だと思っている。とにかく自分が与えられた仕事の中でこうだと思う道を進みいくつもの困難を乗り越えてその仕事を完遂する様は見ている者を感動させる。私の場合はある素材をいかに効率よく高品質な状態で生産するかということに傾注した。世界一も目指した。その素材は複合材として使われるので世間の人が聞いてもどこに使われているのかなど知らない素材だ。しかしその素材の高機能な特性のおかげで最先端(当時の)自動車の改善に寄与したし、現在のIT革命を支える電子機器の特性を上げるための素材としても寄与してきた。私は世界各国で工場の代表者という立場を経験したが、工場を訪ねてくる多くの客先や利害関係者に自分たちが生産している素材の価値を語ることは単にCMだけでなく、自分自身を鼓舞するような気持ちを感じさせるものだった。現在も日本は素材産業が強い。素材は粘り強く特性を改良していくプロセスがあり、日本人のメンタリティーにマッチした仕事かもしれない。ただこの仕事はいずれ新たな素材に代替されるという宿命も持っている。それまでは極限までの挑戦を続けたいと担当者は思う。

ある素材に40年間を捧げた人生だった

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA