製造はかっこいい

 昔から製造トップはかっこいいとおやじから聞かされた。大規模工場では様々なトラブルや事件が発生する。かっこいい製造トップというものは、そうしたトラブルを前にしてもおろおろすることなく、堂々とどうしないといけないかを判断できないとあかんのやとおやじは語った。それまでは、何となく製造現場というものは、いわゆる3K(きつい、汚い、危険な)のイメージがあったが、そういう場所でこそ男の中の男というものは度胸を持って仕事をするものだということを悟った。こんな話を聞かされた中で製造会社に就職を決めた。1ヶ月ほどの新入社員研修が終わって、偉い人から配属希望というものを聞かれた。私は昔からのおやじの洗脳?とも言える教えを受けていたので、何の躊躇もなく工場の製造現場を希望した。当時、学卒はまだエリートと見られていた時代に、製造現場で働きたいという人間は少なかったようで、あとで聞くと同時期に入社したほとんどの学卒者は研究とか営業とか開発とかきれいな?職場希望を出したそうだ。そして私の希望はスムーズに通り、4つある工場のうちの2番目に大きい工場の製造課に配属された。

 そうやって希望通りに配属された現場は、私にとって見るもの、聞くものすべてがかっこよく感じた。現場のおっさんそのものに見えるねずみ色の制服も、初めてかぶる重いヘルメットも何か素敵なファッションのようにさえ感じられたから不思議だ。また工場に入ると、独特の機械音や流れてくる製品が整然と仕分けられ梱包されていく様が五感に気持ち良かった。この感覚は製造現場を離れる何十年か後までずっと続いた。

Young engineer

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA