洗脳するトップ
私たちのビジネスが瀕死の重傷にあえでいる時、会社の上層部より新たなトップが私たちのビジネスをテコ入れするという話が来た。この方は別のビジネス出身の方だったが、そのビジネスを立て直し、今や会社の屋台骨としての役割を担うビジネスに仕上げられた方だと聞いた。最初に勉強会なるものがあり、私も下っ端の中間管理職として参加させてもらった。最初に言われた言葉にどきっとした。「このビジネスは儲からんと言われているが、本当に儲からんのなら今すぐに止めないといけない」との言葉だった。それまでは赤字でもがんばっていれば会社は温かい目で見てくれていると何となく思っていたが、本当はそんな甘いものでなく、ビジネスは常に生きるか死ぬかで戦うものだということを悟った。また同時にこの人は本気で私たちのビジネスを立て直しに来られていて、ダメなら撤退を考えておられるのだなと思った。まず私たちのビジネスの不自然な部分を一つ一つ説明された。今までどう悪いのかよくわからないままに進んできたが、外部の目で問題点を指摘されたのは耳に痛くかつ目を開かれる思いだった。勉強会以後そのトップは毎日のように工場に来てキーマンとと面談をされた。それまでは何か要件があれば工場の者が本社まで説明に行ったが、この人は忙しい会議の合間に工場へ来て皆の話を直接聞いておられた。毎日のように工場に来られるので、トップと工場の皆のコミュニケーションはどんどん良くなっていった。この現場で聞くという姿勢は私たちにとって好ましかった。この人の話はシンプルで、何か法則を見つけてはお経のように同じ事を皆に伝えておられた。それはまさに洗脳だった。
