私も洗脳される

 トップは順番に工場のメンバーと面談されていった。数ヶ月の面談で大体呼ばれるメンバーは固定するようになった。何故か私もそのメンバーの一人になってしまった。面談ではそれまで持っていた常識を外すような話ばかりだったので、ついできませんと言いたくなった。しかしトップはそういう答えを部下が出すのを百も承知で、どうやったらやれるのかに集中して質問を雨あられのようにぶつけてこられた。そして最後は何とかやれそうな話をさせられ、ならばやってみようじゃないかという結論になった。いかに半分圧力で押し付けられた事とはいえ、結果的には自分で導き出した結論だったのでともかくやらざるを得ない状況に追い込まれた。さらにつらいのは、こうした改善は「常識を覆す」おかしな試みなので、回りの皆からの白い目に囲まれながら実行する矢面に立たされるという点だった。現場は一般的に保守的で、新たな取り組みを実行することに強い抵抗をするものである。従来の考えにない取り組みについてはしぶしぶやるので実行スピードは自ずと遅くなる。ある時改善の進捗についてトップから聞かれた。現場での会議の結論に沿って、大体3週間ぐらいで準備ができる旨を伝えると、「3日の間違いじゃないのか?君は本当にこの改善をやりたいと思っているのか?」と烈火のごとく怒られた。その後トップの意向を現場に伝えて交渉を続けた結果、納期は4日まで縮まった。考え方の常識や進め方の常識といったあらゆる世の中の常識は本気でやればいくらでも変えられる事を目の当たりにした。その後自分がビジネスを変革していく上での勘所といったものを学ぶことになった。

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