事業を受け継ぐ
国内と海外で「事業を渡す/受け継ぐ」経験をした。私の会社の屋台骨の仕事は電子部品の仕事だった。1980年代頃まで日本の電子部品産業は世界でトップを走り続けており、Japan as No.1という言葉も生まれたほどだ。会社の祖業も電子部品産業に使われる素材を製造することから始まっていた。しかしこの電子部品の宿命として部品のライフがある。新たな技術革新に伴い古い技術が陳腐化するということだ。私の会社でも主力である電子部品が旧技術から新技術に変わる時期を迎えていた。したがって文字通り会社の命運を賭けての事業転換を行う必要があった。国内ではこの新技術への転換のためにすべての経営資源の転換が行われた。ちょうど私が担当する工場でも大きな転換が行われ、新たな設備への大工事が5年程度の間に行われ、多大なお金が投資に費やされた。また旧式製品を担当していた多くの人員についても、新製品の拡大へ振り向けるために人事異動が実施され転勤を余儀なくされた。一方国内と同様に旧技術の陳腐化はマレーシア工場でも問題となっていた。ちょうど私の担当のビジネスが規模拡大をする時期に偶然あたっており、この海外の古い電子部品工場の資源を受け継ぐことになった。作るものは全く違ったので、製造設備についてはスクラップ&ビルドされることになったが、動力設備や環境設備はそのまま利用することができたし、人員についてもそのまま活用することができた。ちなみにもしこのビジネスを閉鎖するだけであれば、2000人近い労働者を解雇しないといけないところだった。こうして私は「事業を渡す」側と「事業を受け継ぐ」側を数年の間に経験した。
