アメリカ旅行は客先出張
駐在員の皆は上手に休みを取ってアメリカ観光に出かけていた。私は昔の会社員気質があってか、トップたる者現場を離れてはいけないという不文律を自分に課していてあまり観光や趣味の旅行に出かける気になれなかった。これはマレーシアでもヨーロッパでも同様だった。今から思えば変な自負心など持たずに、自由にあちこちを見て回ればどんなに良かったかと思う。しかしまあ今でもその立場になれば同じ行動をしたと思う。そんな中で私が唯一観光旅行気分を味わえたのは、客先への出張で色々な景色を見ることだった。私の本職は製造技術の管理と工場運営だったが、自分の手でものづくりをするわけではなく時間に余裕が出る事もあった。それで1ヶ月に1週間ぐらい「客先訪問」の目的でユーザーの工場を訪問させてもらっていた。この目的の一つは、それまで米国メーカーであった会社が日本ベースの会社となったので、下手くそな英語をしゃべる日本人のトップが時々客先のトップに会うのも大事だと思ったからだ。事実各社のトップは田舎の工場まで自分に会いに来た日本人の私に対して好意的に出迎えてくれた。私も無茶苦茶の英語を駆使して新会社の抱負を述べた。そして客先に行く道中や帰りに美しい米国の自然を見ることができたし、客先が現地の名物料理を食いに連れて行ってくれた。思えば私の海外の思い出の90%以上は仕事とリンクした景色ばかりだったが、これも私らしくて良かったと思う。南はメキシコに近い場所から、北はカナダまで訪問先だけは数10か所にもなった。ヨーロッパの各国の訪問と合せて今も目に浮かぶ景色が色々ある。
