京都サンタクロースの思い出
昔京都の熊野にサンタクロースというジャズバーがあった。ここでは毎週末ジャズのライブ演奏が行われた。出演者はほぼ京都のミュージシャンで、中には大学在学中の学生もいた。ここはちょっとした食事ができ、長時間演奏を聴くには適していた。私はここではいつもサントリーの角をボトルキープしており、ウイスキーの当てにちょっとしたつまみやスパゲティーを頼んだりしていた。そういう意味では大事にしていたライブハウスだった。ある時学生時代付き合っていた女性と一緒にジャズ演奏を聴いていたが、何かのはずみで話題が今後の事について移った。私自身は彼女とは良いお友達の関係と思っていたが、彼女は短大の2回生であり卒業を前にして、私の本気度を聞いてきた。正直な所私はまだ結婚とかある決まった女性と暮らすとかいった具体的なイメージはできておらず、その時はできるだけ彼女を傷つけないように自分の考えを彼女に伝えた。しかし彼女は大いにがっかりしたのだろうが、涙を一杯浮かべてもう二度と会わないと言い残してその店から去っていった。私は彼女をひどく傷つけたような気がしてどうしたら良いかわからなくなり、とにかくボトルキープしたウイスキーをロックで飲み倒した。結果帰る頃にはべろんべろんになって足腰が立たないぐらいに酔っぱらいながらタクシーに乗った。そしてさらにはタクシーの運転手に「今俺は恋人と別れてきた。」と大声で叫んだ。タクシーの運転手が色々話を変えようとするが、それを遮って叫んでいた。思えば青春の思い出の中の最も恥ずかしいシーンの一つだった。その後私の思い出とともにサンタクロースもつぶれた。
