バラード演奏の思い出1

 ジャズバラードは独特の雰囲気を醸し出しながら演奏が行われる。ジャズバラードと言えば、ほとんどの人が甘い女性ボーカルや流れるようなピアノや泣きの入るテナーサックスをイメージする。しかし私の場合はドラムスに一番注目してしまう。ジャズバラードにはお決まりのドラムの演奏がある。その一つはワイヤーブラシを使う演奏だ。通常ドラム演奏は木製のスティックを使って行われる。スティックの奏でる強い打音が明確な曲のリズムを生み出し、観客はそのリズムに乗る。ところがワイヤーブラシでの演奏は全く違う。演奏者はスネアドラムの上でまるでお好み焼きをつくり上げるかのように、2本のワイヤーブラシを時計回りあるいは反時計回りに動かす。そうするとワイヤーブラシがドラムの皮部分とこすれ合い、ザーザーという独特の波のような音が発生する。これがバラードの美しい音色と独特のハーモニーを作り出す。この奏法を私はそのまま「お好み焼き奏法」と呼んでいる。またもう一つの奏法として、バラードのエンディングにお決まりのドラムの叩き方がある。私はこれをポンポンと呼んでいる。バラードの終わりは例えばサックスの独奏が続き、最後に全員で曲を締めるエンディングに入るが、この終わる際にドラム奏者はバチの先に柔らかいボールのようなものがついたスティックでシンバルを叩く。このスティックで叩くとシンバルからジュアーンという音が発生し、いかにも終わりを感じる雰囲気が作り出される。このお好み焼きやポンポン奏法をジャズドラム奏者は必ずやれる。できなければそれはもぐりの奏者だと言っても良いぐらい有名な奏法である。

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