青春時代のファッション6、トレンチコート
1970年代の若者に大流行りしたコートが2種類あった。一つは今も流行るダッフルコートだ。若者は高校生から大人へ変身していくが、その際にジャンパーからコートは一つの変身材料で、中でもダッフルコートは誰もがとっつき易く、簡単に着られるコートだった。いわば初心者向けコートと言えるかもしれない。一方さらに大人になると、もっと自分を大人に見せたいと大人に見えるコートにチャレンジすることになる。1970年代後半の若者の「大人に見えるコート」と言えばそれは間違いなくトレンチコートだった。トレンチコートは米国の俳優ハンフリー・ボガードが美人でスタイルの良い彼女を連れてハードボイルドなアクションに挑むのによくマッチしていた。私が初めてトレンチコートを着たのは、予備校生だった頃だ。受験勉強尽くしで楽しみのない毎日だったが、ファッションぐらいは少しお金をかけたいと近所の紳士服店で選んでもらったコートだった。しかしいざ着て行こうという段になって、いかにも子供が無理して大人になろうとむきになっているように思えて、外へ出るのに躊躇した事を覚えている。幸い私は人より少し身長が高かったのでこのトレンチコートは似合っていたようで、友人からもお世辞を言われたためかすぐに体に馴染むような気がした。その後大学生になり、ライブハウスなどへトレンチコートを着て入ったが、店員の見る目から大人として扱われている気がした。このトレンチコートのブランドと言えば今も昔もバーバリーで、時々街であのチェックの柄を見かけると、あの時代に少年が子供から大人になっていく姿を思い出してしまう。

トレンチコートと言えばハンフリーボガード