「小さい仕事」をする喜び
サラリーマンの仕事というのはいわゆる「大きい仕事」で、その大きい仕事を大勢で行うものである。こういう仕事は団体行動なので一緒に仕事をして一つのものをつくり上げていくという一体感はあるものの、自分が何もかもやるわけでないので「俺が完成させた」という満足感はやや低い。多くのサラリーマンが「歯車の一つ」として働くことに嫌気がさして会社を辞めていくのはこういう部分からだと思う。私自身は中学、高校とサッカー部に所属し、毎日毎日ボールを蹴っていたが、大勢の人と関わることが嫌いでなかったので、チームの一員として「自分の成果<チームの成果」に貢献することにそれなりの価値を感じていた。しかしそれでも一方では自分の心の中に「誰にも邪魔されない」特別な世界をつくり上げたい気持ちがどこかに存在していた。だから仕事を離れて楽しむ趣味などはできるだけ自分のやった事がそのまま反映されるものが好きだった。例えば釣りは何匹釣れたかを誇れるものだし、バンドも自分のパート(私ならギターとかベース)を自己主張できる。また学生時代はよく一人旅をした。一人旅は話し相手がいないので嫌だという話を聞くが、私は見たことのない土地にやって来て、心の中の自分に話かけるのが好きだった。再就職をした際自己アピールができるような仕事が当たらないかと思っていた。ほとんどは荷受けとか商品入荷といったチームワークで行う仕事だったが、展示商品の組み立てという仕事は面白かった。勿論商業製品なのでプラモデルのように誰でも組み立てられるのだが、自分なりの組立ノウハウも構築することができ「似非職人」として楽しめている。

職人の仕事には自己主張の喜びがある