カラオケの曲選びに悩む

 私の学生時代にカラオケというものが世の中に出始めた。それまではピアノなどを中心にした生オケ(生オーケストラ)をバックに歌うものだったのが、急にカラオケ(空オーケストラ)をバックに歌うようになった。この時に困ったのが選曲だった。元々私はバンドをやっていたにもかかわらず、歌の才能がなくかつ声も良くなかったので人前で歌うことにある面恐怖を感じていた。ところがカラオケはそれを許さなかった。順番に誰でも歌わなければいけないという無言の法則があり、人が歌っている合間に必死で曲選びをした。当時は誰でもカラオケでは演歌というのが一つの定番だったので、学生でも大人でも演歌を歌う人が多かった。勿論若者向けの曲もあるにはあったが、あまり数は多くなく圧倒的に演歌でレパートリーが占められていた。そうした中で私が歌ったのは、有名なフォークソングの曲だった。「岬めぐり」とか「戦争を知らない子供たち」とか「いちご白書をもう一度」とかだった。しかし当時のカラオケは現在のように個室ではなく、オンステージで下手な歌を大衆の面前で歌わなければならず、かつカラオケに似つかわしくないフォークソングを歌うのは少し気恥ずかしい気がしていた。それでも友だちに誘われカラオケに行った時は仕方なしにこんなスタイルでカラオケに付き合った。その後カラオケが現在のように流行り、個室で気の合った仲間だけで好きな曲が歌えるようになったし、またカラオケのレパートリーは驚くほど増え、誰もが自由に好きな曲を歌うインフラが整っていった。あの学生時代の頃の気恥ずかしさは何だったのかと思ってしまう。

気の利いたカラオケ曲を選べなかった学生時代

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