スキャットは無敵

 私が高校生の頃「11PM」という番組があった。名前の如く深夜番組であったが、高校生は受験勉強の合間にこの番組をかかさず見たものだ。その最大の理由はこの番組は今なら100%放送禁止になる女性ヌードが登場する番組だったからだ。綺麗なお姉さんの裸を見て若い男は想像たくましくしたものだった。この番組のスタートの曲が何とも言えない雰囲気を醸し出していた。時代的には1950年代ぐらいのビーバップと呼ばれるモダンジャズとスイングジャズの間ぐらいの曲だった。そして多分元々は器楽曲だったものを女性ボーカルがスキャットで歌っていた。いわゆる「シャバダバダ」という発音?で歌うやつだった。その後ジャズという音楽に詳しくなってボーカル曲もよく聞くようになるとボーカリストの中にはこのスキャットの達人が多くいるのを知った。例えば当時最も有名だったジャズボーカリストはエラ・フィッツジェラルドという人だった。見た感じは太って眼鏡をかけたよくいる米国南部の農場のおばさんみたいな人だが、歌うと非常に繊細にもパワフルにも歌えてかつ原曲を全く違うフレーズに変えて歌うことができる人だった。ちょうど楽器陣がアドリブで原曲をコード進行だけ同じにして全く違う旋律にして演奏するように、彼女は同じコード進行を使って全く違う曲を仕上げてしまった。しかしテンポが遅ければ歌の歌詞に合わせて違う旋律を歌うことも可能だが、速いテンポになると歌詞をうまく合わせることができなくなる。そしてそういう場合にスキャットが出番となる。サックスが機関銃のように仕掛けても、それをシャバダバで返すことができるというわけだ。

スキャットの女王エラ・フィッツジェラルド

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